財務諸表が教えてくれる倒産リスクと転職リスク

1. 情報収集の前にやっておくべき準備

就業人口減、団塊世代の引退、終身雇用の崩壊などを背景に、有効求人倍率は上昇を続け、転職市場は活気を帯びています。これに合わせて転職に関する情報もメディアを選ばず巷にあふれていますね。 といっても、情報があふれすぎていて、自分が必要とする情報ほど実は手に入りにくいのではないでしょうか。

勉強でも仕事でも同じかと思いますが、自分の中に情報を評価し、取捨選択する「基準」を持っていないと、意思決定をするために必要な情報が選べなくなることが原因です。

転職理由やそのリスクを洗い出し、キャリアの棚卸しをしたあとであれば、それらを決める基準ができているのではないでしょうか。

リスクの洗い出しのところで調べるべきことを幾つか書き出しましたが、ここではもう少し範囲を広げかつ深掘りしてみたいと思います。

2. 財務諸表を読んでみよう

まずは何と言っても、その会社は大丈夫なのか? すぐ潰れたりしないか? 直近の業績は?などその会社の基本的な情報を知らねばなりません。その点でまず目を通すべきは「財務諸表」と呼ばれる株主・投資家向けの資料で、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」が主なものです。これらは上場企業であれば各会社のホームページの投資家向けのページに掲載されているのが通常ですが、「会社四季報」にも掲載されていますので、一冊手元においておくことをおすすめします。

会社四季報編集部が公開している「四季報らくらく活用」も、無料ですので是非目を通してみてください。

##3. 貸借対照表
貸借対照表は、資産、負債、純資産のそれぞれについて、項目ごとに金額を記載し一覧にまとめたものです。
一覧の左側が資産の部、右側上段に負債の部、下段に純資産が書かれています。資産の部=負債の部+純資産の関係になっていることから、バランスシート(B/S)とも呼ばれています。

純資産合計を負債純資産合計で割ると「自己資本率」が算出できます。この比率が高いほど、借金で経営を賄っている度合いが少ないことになりますので、経営が健全であるといえます。
当座資産を流動婦さんで割ると「当座比率」を求められますが、これは借金を手元の資金・現金(もしくはそれに準ずる資産)で賄えるかどうかを教えてくれます。

資産の部

資産は、流動資産、固定資産、繰延資産に分けることができます。
流動資産は、現預金や手形、株式、売掛金など決算日から1年以内に現金化が可能な資産のことです。特に現預金や手形などすぐに現金化しやすいものは「当座資産」と呼ばれています。

固定資産は、不動産や著作権など通常1年を超えて保有する資産を指します。
繰延資産は、創立費、開業費、開発費、株式交付費、社債発行費が該当します。

負債の部

負債は、支払手形や買掛金などの「流動負債」と銀行からの長期借入金や車載などの「固定負債」に分けられます。

純資産の部

純資産は、「自己資本」とも呼ばれ、株式発行によって手に入れた出資金と事業活動からの利益です。

4. 損益計算書

損益計算書は、会計期間における経営成績をまとめた文書で収益(かせぎ)と費用(コスト)とを比較して、利益(もうけ)がどれくらい出ているのかを計算したものです。

売上、原価を引いた粗利、営業利益が主な項目です。

この計算書を読むことで、儲かっているかどうかだけではなく、その会社の収益力=どうやって利益を出しているのか、を知ることができます。これと有価証券報告書を合わせ読むことで、あなたの希望する職種から配属されるだろう部門がだいたいわかるのであれば、その部門がその企業に(株主に)どれくらい貢献しているのを知ることができます。

流動負債は1年以内に返済する必要のある借金ですので、流動資産よりも流動負債が大きい場合はいわゆる「黒字倒産」のリスクが高くなります。

営業利益を売上高で割った「営業利益率」は、その企業のサービスや製品がどれだけ「付加価値」を持っているかが分かります。
中小企業庁の説明がわかりやすので、ご参考までに。

5. キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書は、手元にどれくらいの資金が残っているか、増減があればその内容は何かを教えてくれる文書です。主な記載項目は以下のとおりです。

### 営業キャッシュフロー
会社が一年間に得た利益を表し、その会社の収益力を示します。対前年比で利益が減少している場合は、営業活動に問題があります。

### 投資キャッシュフロー
主に固定資産の取得や売却で増減したキャッシュの量を表します。固定資産は長期保有が通常なので、投資キャッシュフローも通常はマイナス値になります。
営業キャッシュフローが思わしくなく、投資キャッシュフローがプラスになっているような場合は、資産売却で損失の穴埋めや利益の上乗せをすることになっていないか注目しましょう。

### 財務キャッシュフロー
資金不足が発生したときにどうやって穴埋めをし、余剰資金が生まれたときにどうやってそれを使ったのかを表した文書です。
プラスになっている場合は、金融機関からの借り入れや社債発行での資金調達、マイナスの場合は借入返済や社債償還など借金返済が進んでいることになります。

### フリーキャッシュフロー
営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの合計値で、手元資金を表します。これがマイナスになると金融機関からの借り入れや社債発行で市場から資金調達が必要になりますので、資金面の健康状態を図る指標となります。

6. 有価証券報告書

有価証券報告書は金融商品取引法で事業年度ごとに作成が義務付けられている企業情報の開示資料で、過去の財務状況を報告する文書です。

といってもわかりづらいですね。具体的な内容をみてみましょう。

・会社の沿革や事業の内容、従業員数、平均年齢、平均給与などのその「会社の概況」
・生産・受注・販売、研究開発活動、財政状況、経営上のリスクなどの「事業の状況」
・所有するビルや研究開発施設、生産施設などの「設備の状況」
・株式の発行数、主要株主とその保有比率、配当や株価の推移、役員に関する情報などの「企業の状況」
・財務諸表の内容

通常100ページを超える文書ですので、時間節約のためにも目的を絞って読む必要があります。

私は、「会社の概況」で社風を判断する参考にしたり、「事業の状況」で経営上のリスクから経営層が現状をどう評価し、対策を考えているのかを知る資料にしました。

こうした情報と貸借対照表を読み合わせることで、数字からわかりにくい資産の実情を理解し、より具体的にその会社のことを知ることができるでしょう。

7. アニュアルレポート

アニュアルレポートは、情報公開の観点から、企業が投資家や株主に向けて発信する経営内容についての総合的な情報を取りまとめた文章で、「総合報告書」や「年次報告書」と呼ばれています。
内容的には前年度の業績報告と説明、経営理念、今後の成長戦略の説明がされています。

有価証券報告書とはことなり、写真や図、グラフが多用されていますので、企業の成長や発展、課題がトレンドとして把握しやすく、とてもわかりやすい内容となります。また、経営層の考え方、部門運営の方針なども明確に説明されていますので、その会社の将来性や社風を理解する上でもとても貴重な資料となっている点が特徴です。

日本企業が発行するアニュアルリポート(年次報告書)の中で特に優れたものを表彰する日経主催の「アニュアルレポートランキング」なども目を通すと面白いのではないでしょうか。